創業前に確認すべきこと、知っておくべきこと 引退時の選択肢 ~後編~
こんにちは。税理士の佐藤です。
今回は「引退時にはM&Aという選択肢もある」の続編として、
前回の最後に少し触れた『売却しやすい医院づくり』について掘り下げてみたいと思います。
目次
3.売却しやすい会社、売却しづらい会社 意識したいのは“価値を高める”という視点
動物病院は多くの方が法人化されているので、ここからは“医院”ではなく“会社”として表現しますね。
では一体、『売却しやすい会社』『売却しづらい会社』とは、どんな特徴があるのでしょうか?
私たちは、複数のM&A仲介会社(大手、中堅、専門特化型)と連携していますが、そこで共通して語られることを今回はご紹介します。
※今回は財務数値など専門的な面は除きます。
『売却しやすい会社』
・ストック型ビジネスである(サブスクのように安定収益が見込める)
・組織体制が整っている
・マニュアルやノウハウが共有・蓄積されている
・経営者不在でも回る仕組みがある
・継続的に黒字である
・法令遵守・倫理意識が社内に根付いている
『売却しづらい会社』
・“社長頼み”の営業体制(属人性が強い)
・業務が人によってバラバラ(マニュアル不在)
・法的リスクがある働き方をしている
・株主が多く意思決定が遅い
・赤字が続いている
・コンプライアンス意識が薄い
さて、動物病院の場合はどうでしょう。
動物病院は「属人的なストックビジネス」です。
つまり、売却しやすい点と、そうでない点を両方あわせ持っています。
だからこそ、以下のようなポイントがとても重要になります。
- 利益を安定的に出す仕組み化
- 原則としての黒字経営(例:10年で9年黒字)
- スタッフの自律的な行動
- 法令順守体制
これらを意識していただきたいです。
なお、“経営者がいなくても収益を上げられる体制”は、最初から完璧にできている必要はありません。
むしろ開業期〜成長期においては、
「〇〇先生がいるから通いたい」
というファンを増やすことのほうが先です。
短期的な節税にばかり気を取られて、将来的な大きなリターンを失わないようにしましょう。
大切なのは、日々の損得より、事業価値を最大化すること。それがブレない目標です。
4.動物病院のM&Aは、これからさらに当たり前になる
M&Aによる引退・承継という選択肢は、以前よりも格段に現実的になってきています。
スタッフやご子息への承継よりも、現実的だと感じている先生も増えています。
たとえば、中小企業庁もこのように記載しています。
株式会社レコフデータによると、2021年のM&A件数は公表ベースで4,280件と過去最多。
2022年版 中小企業白書
非公表案件を含めると、実際はさらに多いと推察されます。
また政府も「中小M&A推進計画」を掲げており、今後ますます活発になるでしょう。
実際、私の周囲でも、動物病院の事業譲渡の話が増えています。
5.既存の医院を購入しての開業という手段も
以下のような資産は、実は非常に価値があるものです。
- すでにいる患者さん(固定客)
- 育ったスタッフ
- 地域に根ざした信頼・ブランド
開業を検討中の先生方には、“買う”という選択肢にもぜひ目を向けていただきたいです。
新規でゼロから準備するよりも、すでにある土台の上でスタートできることは大きな利点です。
もちろんデメリットもありますが、事業承継コンサルタントや仲介会社が手厚くサポートしてくれます。
私の信頼する専門家もおりますので、ご興味あればお気軽にお声がけください。
6.最終的に売らなくても、M&Aを意識することはプラスになる
仮に売却しなかったとしても、M&A視点で経営を見直すことは非常に意義があります。
投資家目線で考えてみてください。
“持ちたくなる会社”とは何か。
答えはおそらく、
・継続的に利益が出せる
・財務が健全
・労働環境に問題がない
といった企業でしょう。
こうした会社づくりを目指すことは、結果的に承継にも強い会社を作ることに繋がります。
つまり、“M&Aできるレベルの会社”を目指すこと=後継者にも自信を持ってバトンを渡せる会社
ということです。